2017年05月18日 技術情報
高知大学大学院生の田村慎之介です。
昨日、日本ビュッヒ株式会社主催の新製品「凍結乾燥機 Lyovaporシリーズ」発表を兼ねたセミナーに参加いたしました。
https://www.buchi.com/jp-ja/content/freeze-drying-laboratory
セミナーでは、凍結乾燥の基本から応用について広島大学大学院生物圏科学研究科生物機能開発学専攻食品工学研究室の川井清司准教授のご講演がありました。
今回、ご講演内容の一部を報告させていただきます。
凍結乾燥とは、原料を-30℃~-40℃に凍結し圧力を下げていくことで、固相、液相、気相が同時に存在する三重点を利用し氷を気化(昇華)させ乾燥させる技術です。
特徴は、
1, 低温(常温以下)を維持したまま乾燥が終了するため、各主成分や構造が被る熱損傷が少なく、従来の乾燥技術に比べて熱に弱いビタミン類やタンパク質類が取り扱える。
2, 氷結晶が材料に多孔質構造を形成、つまり氷結晶が気化し、結晶が存在していた部分が空間となるため、表面積が広くなり、結果として水戻り性が高い(溶け易い)、サクサクとした食感の形成を促す。
といったことがあげられます。
味噌汁やコーヒーなどのインスタント食品が私達の生活に身近な凍結乾燥 (フリーズドライ) ですが、食品だけでなく製薬、農業などといった、様々な分野で利用されています。
「褐毛和種生産振興ネットワーク」においては、従来の液体窒素凍結保存に比べより簡易で安全性の高い遺伝資源の保存技術として、この凍結乾燥技術による哺乳動物の体細胞や生殖細胞の保存技術を研究しています。
今回のセミナーによって物理的、化学的な面から凍結乾燥技術の理解を深めることができましたので、今後の研究に活かしていきたいと考えています。
本トピックスをご覧になった方で内容について詳細をお知りになりたい方は、HP「技術・情報提供の窓口」からご連絡いただければ幸いです。
※ビュッヒ (BUCHI):1939年に設立され、スイスのフラビールに本社を置く。世界初のロータリーエバポレーターの開発と商品化に成功したことで有名。
文責:田村 慎之介(高知大学大学院)