2019年03月19日 お知らせ
シンポジウムでは、時間の都合で質問時間を設けることが出来ずに失礼いたしました。
参加者の皆様にはアンケート用紙に質問を書いていただき、講演者からご回答をいただきましたので報告いたします。
黒木 一仁博士 (社団法人 家畜改良事業団)
○「和牛におけるDNA情報や性選別精液の利用について」
Q1.あかうしのゲノム評価に必要な頭数は何頭か。
A.もし、土佐あか牛でゲノム評価をするとするならば、種雄牛、繁殖雌牛、肥育牛3000頭程度のSNPデータがあれば、可能かと思います。もちろん多いに越したことはありません。
従いまして、現存の土佐あかうしの全頭検査をすれば、いろいろな検証ができる可能性があります。
Q2.黒牛のデータを活用できる項目および可能性は何頭のあかうしのデータを調査すれば分かるか。
A.黒毛のデータの流用については、可能かと思いますが・・その場合でも検証などが必要ですので、多数の土佐あか牛のSNPデータは必要だと思います。
眞鍋 由希研究主任 (熊本県農業研究センター畜産研究所生産基礎技術研究室)
○「牛肉中オレイン酸含有率に影響を及ぼす要因と品種特性」
Q1.オレイン酸以外でおいしさとの関係があると予想される項目はありますか。
A.脂肪酸組成のなかで最も多く含まれる成分がオレイン酸なので、脂肪のなかではオレイン酸の影響が大きいと考えます。
アミノ酸系(グルタミン酸など)、核酸系(イノシン酸など)、有機酸系(コハク酸など)に分類されるうま味成分や、糖成分なども美味しさに関与します。
Q2.オレイン酸の種雄牛別分布のなかで気高系では1つだけオレイン酸が低かったが、同じ気高のでも実は流れの違うものがあるのか。それとも農家の影響なのでしょうか。
A.オレイン酸が低かった血統(W)については、父も母方祖父も但馬系の血統です。オレイン酸が高かった気高系(A)ですが、Aの母方祖父は但馬系の特徴の強い種雄牛であるため、母方の影響を強く受けている可能性も示唆されます。
Q3.肥育農家さんの肥育条件によりオレイン酸割合が異なる可能性があるとのことですので、飼料分析などすると興味深いと思いました。
A.各農家で給与している飼料についても、今後関係団体の協力を得ながら調査していきたいと思っています。
Q4.BMSNo.の比較は県内の出荷したものでしょうか。
A.はい、熊本県内で出荷された黒毛836頭、褐毛2,007頭の比較です。
Q5.導入先(宮崎、鹿児島など)はどういった比率でしょうか。
A.導入先のデータまでは把握しておりません。
Q6.農家別のオレイン酸比較で農家A,Bなどは一貫で経営されているところでしょうか。
A. 農家A,Bに関しては一貫経営の農家です。
Q7.脂肪酸の測定で用いている近赤外分析装置について、当該装置から得られるデータの信頼性を示すため、他方法を用いた測定による確証データを示すことも重要ではないかと思いました。
A.当研究所で測定している装置は平成26年の導入時に、県内食肉処理場の枝肉冷蔵庫の温度やと畜後の日数などの環境要因を補正するために、ガスクロマトグラフィーと近赤外分光分析装置から得られた値を用いて検量線を作成しております。今回の講演では一般向けにというご依頼を頂いておりましたので、その内容については割愛させていただきました。
また、今後は脂肪酸だけではなく、食味や融点の測定なども実施したいと思っております。
Q8.農家によって異なる約5%程度のオレイン酸含有率の差がどの程度効果があるのか。
A.効果というのは味にどの程度差があるかということだとすると、当研究所では食味官能評価を実施していないので具体的な知見がありませんが、他報告にはオレイン酸が高いものと低いものとを比較しており、柔らかさや風味でオレイン酸が高い方が低いものより有意に評価が高いという報告もあります。
江口 敬子研究参事(熊本県農業研究センター畜産研究所大家畜研究室)
○褐毛和種における肥育出荷月齢の早期化の検討
Q1.早期肥育した牛肉について、取扱業者から美味しさの評価を聞いていますか。(熊本のあか牛は通常26ヶ月で出荷と黒毛などより早く出荷が行われていますが、それをさらに23ヶ月とした場合、お肉の味はどうなるのでしょうか。)
A.当研究所の肥育牛は農業団体を通して出荷しており、販売先の把握をしておりません。そのため、早期肥育した牛肉の味について評価を聞いたことがありません。
Q2.出荷月齢(褐毛去勢肥育牛出荷月齢))がH29になるにつれて長期化したのはどうしてでしょうか。
A.もと畜費や飼料費などの生産費が増加していることから、枝肉重量を増やし、一頭当たりの収益性を高めるため、出荷月齢を延長したと考えます。
Q3.後期飼料での食い止まりはありますか。
A.群飼において、粗飼料をあまり食べず濃厚飼料ばかりを食べるような個体については、肥育中期から後期になる頃に喰いどまりが起こることがあります。